利己主義

ひどい男ね、と杏は口中で呟く。
ひどい男ね。
初めて会ったその時から、こうして再会するその日まで、彼は彼女を放してくれなかった。
ずっと鳥籠の中に入れられていたような気分で、彼女は全国大会決勝が終わった会場の自販機で、ガコンと音を立てた自販機からオレンジジュースを取り出す。

「酷い人ね」
「どっちがやろね」

千歳は笑った。それに杏は冷えたオレンジジュースを夏の日差しの下で一口飲んだ。
甘ったるい。
二人の関係には明確な‘終わり’なんてなかった。
ただ何となく出会って、何となく付き合って、何となく離れた。
別れた、という意識がないのは互いにそうだったのだと、互いにもう戦う必要も見守る必要もなくなったこの決勝の裏側で思い至った。

「終わらせたくなかったのは、どっちやろね」

その言葉に絡め取られる。絡め取られたのはどちらだったか。
その利己に満ちた関係を望んだのは、どちら?

その利己を私に