耽美主義
奇麗や、と、市丸はその場に全く似つかわしくないことを思った。
さらさらと金の糸が流れて、彼女の瞳からはぽろぽろと美しい滴が零れている。
その全てが、奇麗だと思った。
「奇麗や、乱菊」
掠れる声で、臥した自分に覆いかぶさるように泣く乱菊に、彼は言った。
「奇麗や」
もう一度、呟くように言って、彼はもうあまり自由にならない腕をゆるゆると持ち上げ、彼女の頬の滴を撫で、その金の髪を撫でた。
「乱菊」
「奇麗なんかじゃ、ないわ」
こんな時にそんなこと言わないで、と呟くように嗚咽の狭間で言った彼女に彼は笑う。
死の際で、彼女の美に耽ることの、なんと至上の喜びか、と思いながら、彼は瞼を閉じた。
耽美を齎す最期の女神