至る
その座に至った少女がいる。
額づく、跪く、全てを捧げる。
「全てを」
阿近は口に出してそう言った。全てを捧げると。
「お前はそこに座るのだから」
ネムは静かにそれを聞いていた。その意味を、彼女が知るかどうかは分からない。
「俺は、その座にある死神に、全てを捧げると決まっている」
それが誰でも。それが幼い時から知っている少女でも。
三番目の席次を与えられたその日から、それは決まっていた。
決まっていたが、彼女がそこに至って初めて、彼は己の責務を知る。
彼女の存在が、その責務を思い起こさせ、そうして思い知らせる。
「では、私はあらゆる守護を」
全てを捧げる彼女は微笑んだ。
我らの至るその高み