転ぶ
転んだら、手を差し出してくれた少年がいた。
ぶっきらぼうに、それでも蝮が立ち上がるまで待って。
「怪我ないか」
「大丈夫や」
つんけんと返す蝮に、ちょっと腹を立てるように眉を吊り上げながらも、幼い柔造は転んだ彼女を支える。
つまずき、まろぶ彼女を支えるのは、いつだって彼だった。
「今日は怪我、してるな」
「うん」
「大丈夫やないな」
「……うん」
泣き出してしまいたい。もう立ち上がることすら出来ないような過ちという転び方を、裏切りという転び方をしたのに、彼はまだ自分を支えるのだ、と蝮は思いながらその手に縋った。
縋って、泣いて、そうしたら、もう一度その手をつないで、立ち上がりたいと、思った。
転ぶ私をあなたは救う