しくない。別れの挨拶を風間隊のみんなに言っているアタシを、アタシの頭の中の冷静な部分がぼんやり眺めていた。本当に、らしくない。
しんみりした言葉じゃないけれど、別れの挨拶を言うアタシ、っていうもの自体が、アタシにとってはらしくなく思えて、アタシが勝手に出ていくことの挨拶なのに、アタシはどうしようもなく苛立っていた。

「宇佐美、来い」

いつの間にか、アタシの挨拶の口上は終わっていて、部屋には風間さんしか残っていなかった。来い、と言ったきり、彼はアタシに背中を向け、部屋を出て、黙々と歩いて行ってしまう。長年の経験のためか、今日から上官ではなくなる彼に、アタシはすぐについて行った。

「らしくないな」

風間さんとアタシがついたのは基地の外の自販機コーナーで、彼は甘そうなオレンジジュースを自販機から取り出して、アタシにぽいっと投げた。

「お前がわざわざ別れの挨拶なんて」

らしくないな、と彼はもう一度続けた。ああ、この人はアタシがらしくないことをしたとすぐに見抜いてくれるんだと思ったら、悲しいくらい嬉しかった。

「こういうのは形からですよ」
「馬鹿が。本部にくらいいつでも来られるだろうに」

悪態をつくように言った風間さんに、そういうことじゃないのよ、と言おうとして、やっぱりそれはらしくないから、アタシはその、餞別みたいな甘ったるいオレンジジュースを一口飲んだ。
そういうことじゃないのよ、アタシはこの場所に来られたって、もうここに、あなたのいる場所には帰れないの。


さようなら、アタシの一等大事な場所