さ
さほど、気にしたことがなかった。
生徒からの告白なんて、教員をやっていれば珍しいことじゃない。少なくとも自分には縁のないことだったけれど、話の種としてよく聞いた。
だから、私は紫原からの愛の告白、というものをさほど気にしたことがなった。
それがまさか、彼が卒業してもうずいぶん経ち、彼が成人して、私はもう三十路になろうというところまで続いている事実に、私は他人事のように驚嘆している。
驚嘆はしているが、今となってはやはりさほど気にならない瑣事になっていた。
「ねえ、来週こそドレス決めに行くからね」
「分かった」
部屋に積み上げられたウェディングドレスのカタログとにらめっこしていた紫原が視線を上げて私に言った。
もうさほど気になることなどない。だって、私は結局、彼のその告白を受け入れてしまったのだから―
さようなら、昔の私たち