金烏玉兎集
おや、マスター、我が主。どうしました?このキャスター、アルターエゴリンボに何か聞きたいご様子。
ははあ、道満のお話と来たか。なるほど、なるほど。これなるはアルターエゴ。しかしてキャスター、いえ、陰陽法師道満のお話となれば、なるほど、あなたが興味を持つのも些かも不思議ではない。なにゆえこの道満、悪逆の道に堕ちたるか、気にならないはずがない。眩いほどの正義、正義、正義。拙僧感動いたしました。
播磨に、道摩法師なる陰陽師一人おりますれば。あの安倍晴明と対を成す陰陽法師と語り継がれる者なれば。
ンンン、安倍晴明、晴明、晴明。拙僧が唯一にして無二に『憎む』もの!『嫌う』もの!
ああ、そうですとも、道摩法師であれば、人類悪になり得たであろうと拙僧は思うのです。ああ、無駄な混ぜ物などなければ、あのまま、あのまま!あの不死の身を得た蘆屋道満のままならば、人類悪にもなり得たろうに!
なぜ不思議に思うのです?拙僧は興味がなかった。人類などというものに、人などというものに、興味がなかった。だから人類悪になり得ぬと言われた。まさに正論。では蘆屋道満はどうか。あの者は最後まで晴明に執着した、憎んだ、恨んだ、嫌った!その秘術を奪い、地位を奪わんとした。まるで「ニンゲン」のように。まるで「愛する」ように!
なれば拙僧ではたどり着けぬ高みに道摩法師のままであればたどり着けたのでしょうとも。
そうそして。拙僧は我が秘術を破り、ここに我が身を召喚せしあなたを。
「憎んでおりますれば、嫌っておりますれば、恨んでおりますれば」
故なれば。この道満あなたを。
「好いておりますれば、愛しておりますれば」
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道満の愛はすごく狭隘で恐ろしいほど一途だと思う。その良し悪しは別として(大体が悪いことだと思うしな)
2021/6/18
2022/5/6 サイト掲載