氷菓
「これちょっと割ってくれない?」
これはこれは、分け合って食べるのが前提のような氷菓ではないですか。マスターはやはり可愛らしいところがある。
「勿論」
まあ、拙僧と分けて氷菓を食べるなど、どうかしているとしか思えませんがな。
「マシュー、リンボが割ってくれたから食べよー」
え?
「は、ちょ、拙僧が割ったんですけど?」
「え、うん」
「そこは普通拙僧と分け合いません?」
「そもそも普通の概念とは」
「そういう哲学いいですから」
ンンン?本当にこの御仁はこの道満のことを見くびって……はおられぬが、どうにもこうにも、味方となってからこのかた、気安さが過ぎるというもの。
「マスター、我が主、少々よろしいかな?」
「ちょっと待って、今これ食べてるからって、ひゃい!?」
「おお、これは甘い。甘露甘露。口移しというのはまた味が違うのでしょうかねぇ?」
ですからその口から融けた氷菓を頂戴するくらいで拙僧も勘弁しておきます故。
「ちょっと、なに、し、て?」
真っ赤に熟れた果実の如きかんばせ、いえ、ただただ我が主があまりに気安い故、拙僧も気安く接しただけのことですが?
「ご馳走様でした」
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たまには甘い話もいいよね(物理的に甘い)
2021/8/4
2022/5/6 サイト掲載