In paradise


「我が兄よ、子作りしよう!」

 フラットに戻ってみたら、そこには義妹がいて、しかもそれはネグリジェというか半裸の状態で、ベッドの上でそう言ってくる彼女に、エルメロイU世はぐらりと視界が歪むのを感じた。





「レディ……、またグレイから鍵を奪って?」
「そういうこと、という訳ではないがね、このところ兄上は事件に巻き込まれ過ぎだ」
「それがこの状況と何か関係あるとでも?」

 疲れで眉間に指をあてながら、着替えもせずにそう言ったエルメロイに、ライネスは楽しそうに続けた。

「いやね、こうして事件が続くと兄上の身が心配だ。だからその前にエルメロイ家のために血縁をだね」

 エルメロイはその言葉に死んだような目でライネスを睥睨した。この口上でからかわれて、結局事には及ばずに笑うというのが最近のライネスのストレス発散のブームらしく、こうして半裸の状態のライネスに「子作りしよう!」と言われるのは、もう二回や三回の話ではなかった。それで疲れ切る自分を見て喜んでいる義妹に、その倒錯的な感情を何とかしろ、と思ったし、言ったことは数知れないが、彼女がそんなことを聞くはずはなかった。

「ライネス……」
「ん?なんだい、いつもの逃げ口上か、い…!?」

 そう言いかけたライネスに、エルメロイはシュルリとネクタイを抜いて、彼女の腕を頭上に縛り上げた。いつもの彼ならできない芸当だが、もう彼にもこの遊びを黙認することはできない、という感情があったのかもしれない。

「そんなに子作りとやらがしたいのなら、やろうじゃないか」
「え、ちょ、待ってくれ!兄上ー!」





「んっ、んぅ…やだ、あっ」
「なんだ、子作りするんだろう」

 そう言って、彼はおかしそうにライネスの乳首を舐めていた舌先の唾液を乱暴にぬぐった。
 ネクタイで腕を固定されているから、ライネスはろくな抵抗もできやしなかった。

「我が兄よ、冗談、だから!あぁっ、だめ、だめ!」
「ほう、レディはずいぶん乳房で感じるんだな」 「そういうこと、言うなぁ!」

 ライネスの言葉にお構いなしに、今度は舐めるのをやめて乱暴にその小さい胸を揉みしだく兄に、ライネスは、快楽と恐怖心で必死に言った。

「あやまる、からぁ、あっ、だめ、だめ」
「言っておくがねライネス。君が処女なのは知っている。そうしてついでに言っておくが私は童貞じゃない。女性が感じる場所くらい分かっているし、処女の君は丁重に扱わせていただくよ」
「そうじゃ、なくって、ああ、だめ、あっ!」

 そう抵抗するライネスに構わず、彼はするすると手を彼女の太ももあたりに伸ばしていき、ふんわりと撫でる。そうしてささやかかな防備である下着を器用に抜き取った。

「そこは、駄目だからぁ!」
「駄目だ駄目だというわりに、これはどういう?」

 意地悪く言って、下着を抜き取ったその秘所が濡れているのを示すように、軽く指で掬って彼女の眼前に持ち出せば、いやいやとライネスは首を振った。

「兄上、いじわる、しないで」
「ああ、悪かったな」

 それにエルメロイはあっさり応じて、その秘所の近くの陰核をなぞった。

「だめ、あ、なに、そこっ!」
「とりあえず、丁重に扱うと言っている。辛ければすぐに言え。とはいえ、ずいぶん気持ちが良さそうだがね」

 猟奇的に笑って陰核をぐりぐりと責めれば、ライネスはびくびくと震えながらその快楽を受け入れる。

「だめ、あ、あっ、だめ、いっちゃ、う」
「一度達しておけ、後がある」
 そう言ってエルメロイは容赦なく陰核を摘んだ。それに、ライネスはびくびくと身体震わせて絶頂に達した。

「あ…はぁ、なに、これ…、あっ…ん」

 息を調えるライネスに、彼は笑った。

「どうだ、兄にイかされる気分は」
「我が兄、加虐趣味がすぎる、ぞ!」
「お前には言われたくないな」

 そう言って、彼女の呼吸が調ったことを見て、彼はその彼女のぬかるみに一本指を入れた。

「きゃうっ!?」
「やはりきついな。少し慣らすぞ、息を吐いておけ」

 ぐにぐにと指を折り曲げながらそう言ったエルメロイに、ライネスはあえかな声を上げた。

「やっ、やだぁ、変だ」
「少し慣らすと言っただろう」
「うで、はずし、て」

 ライネスは間断なく与えられる快楽の狭間で荒い呼吸で言った。それに、エルメロイはふっと笑って応じる。

「姫君の仰せのままに」

 そう言って、片手の指は彼女の中を慣らす動きをやめないまま、シュルシュルと、抵抗を止めるために縛っていた彼女の腕のネクタイを取る。
 そうしたら、ライネスはぎゅうと彼の顔を抱きかかえるように引き寄せた。

「兄上、怖い、怖かった、あっ、ごめんなさ、い!子作りとかより、兄上が、怖いのがや、だ」

 そう言われて、エルメロイは自身の怒張が反応するのを感じて、義妹の加虐趣味を笑えないな、と内心思った。

「悪かった。急すぎたな」

 指をずるりと引き抜いて、彼は抱き着いてきたライネスの頭をポンポンと撫でた。

「だって、冗談、だったのに」

 切れ切れに泣きそうに言った彼女に、エルメロイは苦笑する。

「では、ここからは同意の上でやってもいいかなレディ」
「え?」
「私も本気になった、ということだよ」

 そう言って優しく頭を撫でれば、いつもの調子を取り戻したようにライネスは言った。

「我が兄の我がままなら、仕方ない」





「んっ、あんっ」
「三本目、だな。そろそろいいか」

 三本の指を胎内でバラバラに動かされて、ライネスはもう喘ぐこともできずにされるがままになっていた。

「お前の感じる場所もだいたい分かったし、そろそろ本番と行こうか」
「ちょっと、待って!心の、じゅん、び」

 そうライネスが言ったところで、彼は三本の指をずるりと引き抜いて、彼女の額にゆったりと口づけた。

「これで少しは落ち着くかな」
「う…ん」
「では、本番と行くか」

 そう言ったらライネスは口をぎゅっとつぐむから、今度は彼女の唇についばむような口づけをして、エルメロイはその怒張を彼女の秘所に充てた。

「あっ、あんっ」
「挿れるぞ」
「あに、うえ!」
「煽るなよ、ここまで来て」

 そう言って、エルメロイはぐっとそれを押し込む。そうしたら、その動きだけでライネスは絶頂に達した。

「ああ!やんっ、だめ、だめ、兄上に、あああ!」
「くそっ、こんな時まで、兄と呼ばれると、どうにも背徳感がある、な」

 余裕のない声で言ったエルメロイの言葉など聞こえずに、ライネスは指とは全く異なる質量のそれと快楽の大きさにあえかな声上げた。

「あ、だめ、イク、兄上、あああ!」





「ライネス、私だから良かったと思えよ」

 事後にそう言われて、恥じ入るようにライネスはうつむいて、それからぎゅうと兄に抱き着いた。

「嘘つき、子作りとかいいながら、いつのまにゴム付けてたんだ」
「誰が妹というか未成年に生で手を出すか」
「……」
「ライネス?」

 黙ったままぎゅうぎゅうと抱き着いてくる妹に問いかければ、ライネスは拗ねたように言った。

「こんなこと、兄にしかしないとなぜ分からない」

 ばかばかと続けた妹に苦笑して、彼はぎゅうぎゅうと抱き着く彼女の髪を梳いてその金糸のような髪に軽く口づけた。

「それは失敬」
「次は本気で私が襲ってやる」

 やはり拗ねたように言った妹に、兄は笑った。

「では、楽しみに待っていようかな」

 まだまだ先の話になりそうだがね、という言葉を噛み殺しながら、彼は今度こそ彼女の唇に口づけた。




=====
2020/08/24