休日当番医
「ゲホッ……」
やべ、風邪っていうか熱下がんね……もう日曜だってのに、とりあえず市販薬飲んでたのに、ていうか明日から仕事だってのに、いや、有給貯まってるけど、それにしたって……
「39度……流石にキツイ……咳止まんねぇし……」
職場に行けないのはそうなんだが、それ以前の問題として、これもう市販薬で何とかなる範囲超えてる気がする……と思いながら、僕はぼんやりとベッドでスマホを確認する。
一応、町職員で健康福祉課に今は配属されているから、自分が作ったホームページの中の休日当番医の項目を調べて、『永倉医院』と書いてあるのを確認した。
小さな町の中の町医者、というか、日曜でも休日当番の医院が回るからまだなんとかなっているが……
「永倉先生ってもうけっこう年齢がなぁ……いや、良い人だけど。今度、会議の時とか当番の順番とか町立病院のいろいろとかも考えねぇと」
こんな時まで仕事のことを考えたくはないんだが、と思いながらも、とりあえず明日は休まなきゃならない、というか周りにかえって迷惑になるし、と思いつつも、それにしたって明日まで我慢するには熱も咳ももう限界だから、診てもらいたい、と思って僕は適当に着替えてマスクと車の鍵を取り出した。
*
顔見知りの看護師さんに事情を説明したら、「ちょっと待っててねー」と笑顔で言われて、待合室で待つこと5分ほど、診察室から「どうぞ」と若い声がしてあれ?と思う。
「あ、れ?……失礼します?」
「はい、斎藤さんね、風邪?」
「……新八……なんでここにいるんだよ」
「え、親父から継いだっていうか自治医科大の僻地医療終わったから帰って来ただけだけど?」
知らなかったのか?おまえ健康福祉課じゃねーのかよ、と言われて、幼馴染というか昔からムカつくだけで殺すのも嫌だから事故かなんかで死んでくれねぇかな、と思っていた永倉家の次男坊の新八が白衣を着て座っていて、そう言われる。
「帰る!」
「いや、暴れんな、風邪引いたんだろ。ていうか休日当番に来るくらいだからそれなりにってかさっき測った体温39度超えてんじゃねぇかよ、帰るとか言われても診察せざるを得ないだろ」
呆れたようにそう言われたが、無理、何でコイツいるの、ていうかコイツに診察されるくらいなら死んだ方がはるかにマシなんだけども!?
「おまえに診察されるくらいなら肺炎で死んだ方がマシだ!死ね!」
「うわぁ……斎藤変わってねぇなぁ……ていうか肺炎か分かんねぇし肺炎マジで死ぬぞ?」
「死んだ方がマシだ!」
「うわぁ……」
心底呆れたようにそう言った新八が目配せしたら、看護師さんに座らされる。待って、帰ります。
「ガキ通り越して幼児かよ……」
そう言って服を上げなくても聴診器を入れてきた新八に怖気がした。
「変態、新八の変態!」
「なんでそうなる……マイコプラズマかねぇ……レントゲンの準備しといて」
てきぱきと診察されて、検査されて、レントゲン室にぶち込まれて、そうして……
「あー、肺炎だな。市販薬と寝て治るもんでもないから。馬鹿だろ、もっと早く医者行けや」
「うるさい、馬鹿はおまえだ!馬鹿のくせに粋がるな!」
「粋がってねぇよ……とりあえず薬飲んで寝てろ。マジで死ぬぞ、馬鹿」
「帰る!」
「おーう、帰って薬飲んで寝ろ」
永倉医院には二度と来ない……!ていうか休日当番医とか町立病院の色々から外してやる!ふざけんな、新八の顔とか見たくないんだよ!
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永倉先生と町職員斎藤君のハートフルボッコの再会。CPはないんじゃないかなぁ…永倉さん史実でもそうだけど頭いいしね。
2023/12/7