すき

 新八との生活……生活も慣れてきた。番になって、引っ越して、ヒートもあって、もう半年くらい経つ。半年ってことは、二回くらいヒートがあって、それもそうだが、そうじゃなくても時間が合うと新八と寝てる気がする……

「自堕落、というか、新八ってあんなに、その……性欲的なのあるの……?」

 なんかもう、近所の女の子とかにも『服をちゃんと着ろ!』とか水着で叫んでる印象しかなかったから、無理やりってことは絶対ないけれど、『ヤりたい』と言われると未だに困惑するのは俺の考え過ぎだろうか。

「そ、れに……」

 良いように開発されているような、と思ってしまった。胸は確かにオメガの男は感じるように出来ているが、そんな知識、新八にあったのかよ、と思うほど、引っ越してから一回目くらいで、なん、か……

『そういや、斎藤って胸感じるか?』
『……は?』
『いや、オメガがどうとか言いたいワケじゃないんだがな、おまえ初物だったし』
『初物とか言うな!』
『え、あ、すまん。嬉しかったから』
『か、感じるワケ、ない、だろ!』
『ふーん、じゃあ少しヤるか』

 そう言われてなんか執拗に開発されて、今はもう新八に触られただけで何ていうか……

「あああ!」

 もう考えたくない!
 確かに新八は幼馴染だけど年上で、いろいろと知っている年上だから、と思ったが、それにしたっていいようにされている気がする、と思いながら夕飯を作る。今日は新八も定時で帰るって言ってたし、金曜だから明日から休みだし、そもそも不規則な生活をしている俺の方は、だけど今は特に立て込んだ仕事もないし。

「なんか、いっつも忙しいと新八に作らせちまうし……」

 ていうか知らなかったというか、ていうか学生時代とか、社長やってる時もひとり暮らしで、ついでに俺のヒート明けも世話をしてくれていたんで、当たり前かもしれないが、新八ってあんながさつなのに、家事うまい、よな……

「不味くない、よな……?」

 生姜焼きは流石に豚肉の枚数的に味見できないし、お浸しとかはそもそも味見するもんでもないし、もう何度か味噌汁の味見をしたが、汁が尽きる前にやめなければ。

「ていうか、新八の味の好みとか……知らないかも」

 ぽつりと呟く。なんていうか、俺の好みの味でいっつも出されるから、新八はどうなんだろうって思ってしまって。なんか見た目と性格的には味濃いめの方が、好き?なんだろう、か?

「でも……」
『番になったのに遠慮してんな、アホ』

 思考に新八の声が被さる。聞いてもいいのか、と思っていたそこに被った声に、ぽつんと呟いた。

「今度、聞いてみる、か」





「ただいまーっと」
「あ、新八」
「おう、定時で終わった。ていうか終わらせた」

 帰って来た新八に何となくホッとして、嬉しくて言う。

「飯出来てる」
「斎藤の飯美味いから好きなんだよな、ありがとな」

 そう言って笑った顔が、好き、で……だから……なんていう、か……

「あの、不味くない、よな?」
「は?」
「すまん、何でもない!手洗いうがいしてこい!すぐあっためるから!」

 思わず叫んでしまって、不思議そうにしている新八に構わず俺はキッチンに走った。





 テーブルに並べた夕飯を食べながら、向かいの新八の様子をうかがう。食べ方はなんていうか、豪快に見えてちゃんとしていて、育ちが良いというか、そういうのが分かるから、余計心配になって、もう一度聞いてしまう。

「不味く、ないよな……?」
「は?美味いけど?どうかしたか?」
「おれ、新八の、味の好みとか、知らない、から……いっつも新八はこっちに気ィ遣って作ってくれてるの、知ってて、その……」

 そう言ったら新八が少し笑った。笑ってそれから味噌汁を飲む。

「美味いけど?ていうかおまえが俺の好みなんか聞いてくると、こっちも安心して話しできるな」
「……なに、が?」
「いや、なんか斎藤、俺に興味ないかもなーとか思うことあって」

 新八にしてはなんかこう、不安げ、というか、自信なさげな言葉に、何となくこっちまでドキドキした。いい意味で、ではない。何かあるのか、みたいな、そういう。そう思ったら、新八に言われた。

「飯食って、それから片付けとか歯磨きしたらちょっとリビングで話ししようぜ。明日予定ないよな?」
「え、ああ、ないけど?」

 どうか、したのか?





『斎藤が作ってくれたんだから片付けくらい俺がやる』

 そう、仕事帰りで疲れているだろうに言ってくれた新八が譲ってくれなくて、そのまま皿洗いとかを始めた新八を横目に、食後のいろいろを終わらせて、それから食事中に新八に言われた通りにリビングで待っていたら、全部終えたらしい新八が来る。

「待たせて悪かったな」
「別に」

 そう言って笑った新八が、でかいというか、俺の感覚で言ったらでかすぎるソファの、俺の後ろに座ってそのまま抱きすくめられた。

「な、に」
「いや、この方が見せやすいから」
「なにが?」

 不思議に思っていたら、後ろから抱き込まれる形で、スマホの画面を見せられる。
 なに、これ?指輪……?

「あの……なに?」

 そう後ろから拘束されてはいるが、そのまま画面を眺めつつ自分の指にそっと手をやる。そこには新八と番になった時にもらったサファイアの付いた細い指輪が収まっていた。

『斎藤の髪に似てるから』

 そう言っていた彼が見せてくれているのは、オーダーメイドの指輪の店のホームページ?で、なんだろう、と思って訊いたら、新八が言う。

「あー、なんかな、その指輪やった時は俺から一方的にだったし、俺も揃いの欲しいなーとか思って」
「……え?」
「もう半年経つし、なんていうか、もっと早く言い出せば良かったんだがな、何となく言い出せなくて、あと良さそうな店探してたら遅くなった。すまん」

 そう言った新八が見せてくれた画面に映っているのは指輪自体も石もオーダーメイドで作れるらしいそれ。

「このあたり。柄とか指輪二本嵌めて、お互いで合わせたり出来るのいいかな、とか思ってて」

 新八にしては恥ずかしそうに言われたそれだったが、思わず言ってしまう。

「これ、もらったから、十分だから!一緒にいてくれるだけで、十分だから!」

 思わず叫ぶように言ってしまって、思わず泣き出しそうな声になってしまって、そうしたらきつく新八から抱き締められた。

「あー、何て言うか。この指輪がどうとかおまえがどうとかじゃなくて、あん時はいろいろすっ飛ばして渡したから。それに俺も指輪嵌めてたいし。前のを婚約指輪、今回は結婚指輪じゃ駄目か?」

 そう言って、何もなかったように「このへんとか」と綺麗な銀の環を示す新八に、ぽろぽろ涙が出てきて、それで。だけれどそんなこと知らないというように、そのくせ涙を優しく拭ってくれた新八が言う。

「明日、店予約してあるから見に行こうぜ。石はサファイア、これは俺も譲らないけども、他は斎藤が好きなの選べ」
「あ、の……」
「サファイアなら、おまえの髪の色みたいだし、俺の目もそんな感じだし。少し薄いけど。結婚指輪に石もどうかと思ったけど、まあな」

 そんなことをさらりと、当たり前のことみたいに言うのが嬉しくて、自分には不釣り合いだと思っていたのに、当たり前のようにそこにいて、そう言ってくれる新八が好きで、ボロボロ泣きながら、俺はその腕の拘束から抜け出して新八に口付けた。

「ん、どした?」
「ごめん、ありがと、ごめん」
「泣くな、どうしたらいいか分かんねぇだろ」
「……滅茶苦茶にして」

 俺だってどうしたらいいかなんて分かんなくて、嬉しくて、そのまま新八に言ってしまったら、そんな俺の口付けよりもずっと深く、優しく口付けられて、呼吸を奪われる。

「おまえが言い出したんだからな」

 そう、一言言い添えられて。





「あうっ、も、むり……!」
「まだ胸だけだろうが」

 そう執拗に新八が胸をいじくりまわして、もう30分は経っていると思うし、俺自身ももう何回イったか分からないのに、新八はまだ俺の胸を揉んだり、噛んだりしていて、その感覚に俺は大きく息をついた。

「ふぁっ……やら、も、やら!」
「そんなにイイかよ?」
「ばか、新八の、ばか!」

 笑って訊いてきた新八にそう言ったら、ガリっと突起を噛まれた。

「ひうっ!?あ、やっ、また、また!うぁっ、イくっ、やら、らめっあっ!」

 知らずに生理的な涙がぽろぽろ零れる中で、また絶頂の波に襲われて、下半身がうずいて、もうどうしようもなくて胸に顔が近づいていた新八を抱き込んだら、楽し気な吐息が掛かって、それさえ刺激になってしまって、涙が止まらなくなる。

「やめ、やめて!」

 必死に叫んだら、「あ」と短い声がして新八の動きが止まった。

「わりぃ、あんまり可愛いから。怖かったな」

 そう言ってあやすようにぽんぽんと頭を撫でられて、涙を掬い取られたら、頭がぼんやりしていたけれど、いつもの新八だ、と思ってそのまま縋りついてしまう。

「あ……もう、しない、で……」
「分かってる。終わりにするか」
「それは、だめ」

 必死に言ったら、また新八にあやすように撫でられた。

「悪い。今楽にしてやるから」
「ん、しんぱち、も」
「……あんまり可愛いこと言うな」
「ひっ、あっ!?」
「力抜いてろ」

 そう言った新八の性器が宛がわれて、もう充分濡れていたそこにずぶずぶと入って来る。急ではあったけれど、何度も重ねた身体だったから、受け容れたそこに、だけれどその快楽に慣れるということはなくて、そのまま声が漏れて喉が反った。

「あっ、やっ、おっき、い……うぁっ!」
「あんま煽るな」

 冷静な感じでそう言った新八に、いつものように、だけれどいつもより早く最奥をこつんと叩かれる。

「ひっ、うっ、あっ」

 子宮の入り口を肉棒で叩かれて、擦られて、耐え切れなくて。

「イく、らめ、むり、あっ」
「我慢させたからな。いくらでもいい」
「やっ、ああっ、も、うぁっ!」
「だが、止まるのは無理だからそこはすまん」
「ひあ!?いま、らめ、イって、る!」
「無理だ、悪い」

 頭が真っ白になっているのに、まだ快楽を与えらえて、そのまま奥を暴かれて、何度も何度もイかされて、もう訳が分からなくなってきたところで、新八に耳許で言われた。

「出すぞ、逃げんな」
「んっ、あっ、やっ」
「逃げん、な」

 少し苦し気な声がして、それから自分の胎内が締まっているのが分かって、そのまま熱い精液を奥に浴びせられる。

「あ、つい……きもちい……」

 とろりとした気分で言ったら、なぜか新八に溜息をつかれた。

「?」
「明日があるから、今日は終わり、な」

 もう何回もイってるし、と回らない思考で考えながら、まるで自分に言い聞かせるように言っているようにも聞こえた新八に、こくんと頷いた。





 次の日に行った宝飾店は、完全予約制というか、なんというか、そこで見せられたものはどれも魅力的だったが、今住んでいるマンションもそうだけれど、俺からすると法外な値段というかなんというかな内容な気がするのだが、新八にとっては特段気にするものでもないらしく、そうしていろいろ見ているうちに、石はサファイア、それに合う台と選ぶの楽しくなってそんなことを忘れてしまった。

「これとか、お揃い」
「悪くねぇな。これにするか」
「ああ」

 笑って言ったら店員さんにサイズを測られて、互いにそれなりに武骨な指ではあるんだが、と思いつつもそうやって綺麗な指輪が決まって……





「ただいま」
「あれ、新八、早いな?」

 飯は出来てるけども、今日定時だっけ?と訊いたら、玄関で靴を脱いだ新八に言われた。

「いや、飯は有難いし食べるが、ちょっとリビング来い」
「?」

 不思議に思いながら、着替えたりなんだりしている新八をリビングで待っていたら、私服に着替えて新八がリビングに来た。

「あ、わりいな。これ」
「ん?」

 なんだろ、と思ったら手を取られる。そうしてそのまま左手の薬指に銀色の環に青い石が付いたそれを嵌められた。

「出来たって聞いて、取りに行った」
「あ、の……」

 新八の指にも青い石が付いた指輪が嵌っていて、そうしてゆったりと額や頬、それからその指輪の収まった指に口付けられる。

「なあ、俺は斎藤が好きなんだよ……一に惚れてんだ。受け取ってくれるか?」

 いつになく真剣に言われて、大事なものを扱うように、いつだって大事にしてくれるけれど優しく撫でられて、ぼろぼろと涙が落ちた。まるであの日のように。

『斎藤がそれでなんかあんの?斎藤は斎藤だろうが』

 自分がオメガで、絶望して、蔑まれて、憐れまれて、どうしようもない時に、ひとりだけ、俺のことを見ていてくれた新八の言葉をもらった時のように。

「俺で、いいの?」
「おまえがいい。おまえはおまえだろうが。だから、選んでくれ、俺のこと」

 そう言われて、どうにもならない感情のままで、俺は泣きながら応えた。

「俺も、新八がいい」

 間違いなく、俺の意思で選んだのが、おまえだから。
 そう思いながら、その指輪を撫でた。
 その俺の手に重ねるように、慈しむように撫でてくれた新八の手の温度が、嬉しくて、懐かしくて、嬉しくて。

「ありがと、すき」

 だいすきだから。




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お付き合いいただきありがとうございました。
2023/12/11