「んっ」

 舌を引きずり出して、絡めて、軽く噛んでみる。永倉さんの表情がどうしようもないほど崩れるこの時が一番好きかもしれない、なんて思いながら。

「は、じめ」

 態と音を立てて唇を離したら、息の上がって赤い顔をした永倉さんに睨まれた。

「あんた、相変わらずキスする時の息継ぎ下手っすね」

 挑発するように言ったら、涙目の永倉さんにやっぱり睨まれる。息継ぎが下手なんて本当に面白いような、それでいてどこか何か、この彼はいつの永倉さんなんだろう、なんてどうでもいいことも考えた。

「うるさい」

 短く言い返してきた永倉さんは、相変わらず着物以外着ないから脱がせにくい、と思いながら、もう一度口付けて黙らせて、そうして帯を抜く。緩んだそこに適当に手を入れて肌をなぞれば、びくりと震えるこの人は、本当に何度やっても慣れないくせに、ひどく敏感なのはその従来の剣士だのそういった細かいことに敏感になる性だろうか、なんて非現実的なことを考えた。

「……や、めろ」
「なんで?」

 軽く触れていた肌を辿るように、体の線をなぞるように自身の手を動かして、でも焦らすように永倉さんの身体を愛撫していたら、キッと睨みつけてきた、相変わらず涙目で睨んだってどうにもならないような目がこちらを見ていた。こういう時だけ表情が動くの、どうにかならんのかな、この人。

「我慢できないからですか?」
「ちがっ……!んっ、やめっ、くすぐ、ったいから!」
「違うでしょ?」

 くすぐったい、と誤魔化そうとしたその人の肌を撫でていたら、だんだん蕩けたような甘い声がした。くすぐったいとか、やめろとか言うくせに、褥でだけは崩れていくこの人の表情に、捉えられているような気さえした。

「あっ、やっめっ、ふぁっ……」
「やめろってんならやめるけど?」

 そう聞いてやったらふわりとした顔の永倉さんに言われる。

「やめん、なっ、つ、づきっあっ、やらっ、ぁっ」

 喘ぎながらそう言ったその意味が分かっているんだろうか、と思ったら小さく笑いが落ちた。そのまま肌をなぞって適当に用意していた潤滑油を指に流して後孔を探ってみる。もう何度も寝たことがあるその人は、特に抵抗もなく僕の指を飲み込んだ。

「っ……んっ」
「だから、いっつもだけど息止めんな」

 だというのに、相変わらず慣れるということのないような永倉さん本人の方が息を止めてしまうから、きつくなって指を締め付けてくる。軽く浅いところで動かしながらそう言ったら、緩く吐き出した息と赤く染まった顔にやはり笑みが漏れた。

「はっ、あ、やめ、そこ、やだ……」
「なんで?好きでしょ?」

 浅い部分の弱いところを撫でていたら、びくびくと反応する体に比して、永倉さんはイヤイヤと首を振る。

「あっ、やらっ、んっ……あさ、いっ……あっう」
「なに?」

 分かっているのに聞き返したのは少し意地が悪いと知っているが、普段から相手にしてこないくせに、こういう時だけ従順なのが悪い、と思いながら問い掛ければ、永倉さんはとろんとした顔のままで答えた。

「もっと、ふぁっ、うあっ、もっと、おく……あっ……」
「淫乱」

 要求に一言答えて、ついでだから指も増やして奥まで挿れれば、びくんと身体が跳ねる。

「ひあっ!?きゅう、にっ……あっ……だめ、やめっ……うぁっ……!?」
「あんたがもっと奥って言ったんだろうがよ」

 笑いながら言って、奥まで挿れた指をバラバラに動かせば、縋るようにこちらに抱き着いてきた身体をそのまま布団に縫い付けて、そうして圧し掛かるようにしながら指を動かした。

「ほらよ」
「うあっ、はじ、めっ!ぁっ、やら、おく、っ!」
「もう自分で何言ってるか分かってないみたいですけどね」
「ふぁっ!?」

 そう言って指を一気に抜いたら、軽く悲鳴を上げた永倉さんがそれでもその喪失感なのか期待なのか知らないが、濡れた瞳でこちらを見上げて来た。
 こういう時ばっかり、と思うけれど、それでも今はこちらを見ている、と思ったら十分に満たされる。そう思いながら、彼の姿にもう硬くなっていた自身をそこに宛がった。

「舌噛むなよ」
「ふっあっ!?ひうっ、お、くっあっ!」
「奥好きだろうが」

 適当に言って、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てるそこに自身を挿れて、そうして奥まで突いていたら、甘い嬌声が上がる。

「あっ、おくっ、あたるっ、はじめの」
「ほんっとに弱いよな」

 半ば笑いながら言ったが、もう聞こえていないような永倉さんは、もう真っ当な意識なんて残っていなんだろう、と思うとどうにも楽しい、なんて悪趣味なことを考えた。

「まだトブなよ」
「あっ、やらぁっ、っ……!」
「俺がイくまで付き合ってくださいね」
「ふっ、あっ、やらっ、あっ、うぁっ、だめだって、ば!」
「なんだ、まだしゃべれるじゃん」

 ぐちゅ、と奥まで一気にぶち込んだら、急に締め付けられる。良かったみたいだな、なんて思いながら、こっちも限界だし、と思ってそのまま永倉さんを抱え込むようにして、逃がさないようにしてやれば、永倉さんも抱き着いてきた。

「あっ、ひうっ、も、むり、らから!」
「ハイハイ、イっていいですよ。俺も出すから、避けんなよ」
「っぅっあっ、やら、あっ!」

 叫んでさらにこちらを締め付けて来た永倉さんの、孕みもしないその胎内に精を吐き出して、そのまま意識を手放したその人を抱き留めて、俺もそのまま自身を引き抜いた。自分で吐き出した白濁が卑猥な音を立てるのがどうにもアレだが、意識が落ちたと言うよりは、そのまま眠りやがったどうにもこうにも豪胆な永倉さんに、精液を出したからかなんなのか知らないが、後始末と片付け、なんて冷静に考えながら、俺もひとつ息をついた。





 当たり前のように起きて欠伸をして、当たり前のようにきっちり着物を着こんだ永倉さんに、何とはなしに言ってみる。

「夜の方が可愛げある、絶対」
「は?」

 不思議そうに返してきた表情が動かんあんたのセフレか何かかよ、僕は。

「……あんなに可愛いのに」

 いいけどさ、別に。




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2023/10/19