ウサギ日和・柔軟

「うーん」
「斎藤さん?」
「あ、マスターちゃん」

 ぴくんと跳ねた耳は感情表現が豊かだ、と思いながら藤丸は、だが今日は捕獲予定もないし、と思い(というか食堂はエミヤやブーディカに監視されている)、珍しく一人でそばを食べていた斎藤に声を掛けた。何か思い悩んでいる、というふうに見えるが、どうしたってウサギ化する以前よりは分かりやすい、分かりやすすぎる、と思いながら。

「どうかした?」
「え、むしろ斎藤さんがどうかしたの? なんかすごい悩んでるみたいだから……」
「え……」

 バレバレだよ、と付け足した藤丸に、斎藤は今度はしょんと耳を垂れさせた。分かりやすい、というか……。

「なるほど……こういうところに入れ込んでるのか……」
「え?」
「いえ、おとなのせかいはわからないなとおもっただけです」
「? あ、そうだ。今新八シミュレーター使ってるでしょ? それもあって待ってる間昼飯食ってたんだけど……」
「許可アリなの?」
「え、うん。なんか分かんないけど最近よく散歩? していいって」

 ……それもそのはずである。コヤンスカヤ達に誘拐されてから、あまりにもきっちりかんきん……ではなくて、部屋にただ仕舞い込んでおくだけでは良くないとなったのが永倉なのだが、その複雑な事情について斎藤は理解していない。というかたぶん、そのあたりの微妙な信用や永倉自身の自信の程について分かっているのは、悲しいかな永倉本人を除けば土方と山南辺り、というのが永倉にとっては絶妙に癪に障るラインなのだが。

「まあそれはいいんだけど」

 そうやって相変わらず大事なこと分かってないし言わないから! と食器を洗いながらブーディカは声に出さずに思っていたが、それはそれで何だかかんだとナガクラが可哀想だ、と思ってとりあえずやめた。あたしのこれは子育て世代の感覚だ、と彼女は思ったが、それはそれでやっぱり可哀想だ。恋人なんだから、と思ったら余計可哀想になってしまう。
 ……悲しいかな、永倉が思っているよりも永倉が自分が斎藤に信用されているのかいないのか、どうやって大事にするのが正解なのか、と考えているのは土方や山南だけでなく、このあたりの子育て世代メンバーにバレている辺りがより……しかしそれは別の話である。

「なんかこの間、コヤンスカヤさんに誘拐されてから改めて思ったんだけど、今は鬼神丸も重くて持てないのはそうだし……でも完全にウサギってワケでもないんだからなんかしとかないとなーって」
「……その心は?」
「……捨てられたくないなあって」
「……パフェだよ」
「あ、ブーディカさん!」
「あの、注文してないっていうか、怒られ……」
「いいからこれマスターと食べなね?」
「あの、これ……」
「ウサギってさ、体柔らかいよね? こう、手が届かない所に届いたりしないかな? あと敏感だから斥候とかどうかな? 絶対縄張りには敵を入れないらしいじゃない」
「どういう……? あ、でも柔軟ならなんとか毎日できるかなぁ……耳と尻尾があるから斥候とか間諜は無理かと思っていろいろ考えてたんですけど」

 そう耳を垂らしながらも少し前向きに答えた斎藤にブーディカは思う。三歩進んで二歩下がる、というのがあるらしいが、なぜ永倉と斎藤は再会したとかそのへんはいいのだけれど、ウサギになったのもいいのだけれど、三歩進んで二歩下がった後立ち止まるのだろう、と。

「後ろに下がってないことだけは評価できるけど……」
「み?」





「……なにやってんだ?」
「え?」

 永倉が「先に帰ってるって」とマスターに言われてシミュレーターから急いで部屋に戻ったら、斎藤がベッドで丸まっていた。丸まって……? と考えてから体調でも悪いのか、と思ったが、それはなんというか、体を折りたたんでいるように見えた。

「柔軟」
「柔軟?」

 一言返されてそれからぴょこんと上半身を持ち上げるように起き上がったウサギは、かなり柔らかな動き、というよりも、人間体だった時よりもはるかに滑らかな動きで体を折ってみたり、伸びをしてみたりして、それからそれを見せるようにして言った。

「体柔らかくなってるから」
「……知ってるけど」
「え? 知ってたのか!?」

 心底驚いたようにそう言われて、滑らかに動くたびにぴくぴくとついていくように揺れる耳と尻尾を見ながら、永倉は少し遠い目をした。いや、何か他に絶対理由があるはずだ、と思いながら。

「んー、まあいいや。こうやってたら普段より体柔らかいから、なんか新八馬鹿だから変なとこにもの落した時とか届くかもしれない」
「……は?」
「ウサギだから役に立つかも!」

 そう元気に言われて永倉は思わずぺしっと斎藤を叩いて、青い耳を撫でた。

「みっ!?」
「いや……叩くとこではなかったかもしれん。すまん」
「え?」
「この間も言ったが、別におまえがウサギだからどうこうってんじゃないし、もっと」

 そう言い掛けてから、叩くところじゃないと自分で言ったそれを思い出す。そうしてさらに、この間、『寂しい』と口にした自分自身を思い出す。

 そうじゃない、と。

 ウサギになったとかそういうとんでもない非常事態だろうと、そういうことがあろうとなかろうと。

「そうじゃ、ない」
「……?」

 カルデアで再会して、どうやったらいいだろうと思ったのは嘘じゃない。そうじゃない、と。あの日、手を離したのはそうじゃなかった、と。だけれどそれも、嘘ではなかった。
 あの日に手を離したのは、互いに嘘ではなかった。
 互いに嘘ではなかったから、今また、言葉を交わすことが出来るのだと、少なくとも永倉は信じていた。

「あの時、あれが嘘だったら。試したなら。そもそもがぜんぶ間違いだったら」

 こんなふうにはなれていない。だとしたら。だけれども、そんな機会は本当は巡ってこないはずだった。

「望外ってのはこういうことかもな」
「なに、言って?」

 言葉にしないと分からない、と言われればそうかもしれない。だけれど少なくとも、自分たちは一度離れて、そうしてやり直せたからここにいる。

「俺はああやって後悔した。後悔したし、呆然とした。亡羊とした。その先にこんなことがあったんだから、それはそうかもな」
「新八?」
「そうだな、ウサギってかおまえの体やわらけーのはよく分かってる。ほぼ毎晩だし」
「は? やめっ!?」
「なに? 痛いのか?」
「痛くは、ないけど! 折りたたむな! っていうかそういう折りたたみ方するな!」
「どういう折りたたみ方されてんだよ?」
「黙れ!」
「こういうからだの柔らかさって楽だよなー、ナニがとは言わねぇけど」
「らくじゃ、ない! まて、今、ちがう!」
「あ、服脱ぐか?」
「なんで! なんで!?」

 おまえが柔軟してたから、と理不尽極まることを言って永倉はそのままベッドで何だかんだと『役に立とう』と頑張っていたらしい斎藤の柔らかい身体をそのまま丸めるように抱き込んだ。

「別にいいってか、おまえの方が強いだろうが」
「はぁ!? 当たり前のこと言うな! 僕の方が強いから更に新八を守ってやろうって……やめろばーか! 折りたたむってか、さわる、な! ぬがすな!」

 そう涙目で赤らんだ顔のまま言ってきた斎藤の耳を撫でて尻尾を撫でる。そもそもウサギは、というかウサギが。

「万年発情期だから付き合ってんだろ?」
「へ、んなこと言うな!! ぼくが、おまえに付き合ってんの!」
「へぇ? じゃあ付き合ってくれよ、体もやわらけーし」
「ちが、そうじゃ、なくて!」

 陥落寸前で折りたたまれている彼を見ながら、永倉は軽く耳を撫でて笑った。





「んっ、うぁ……」
「ほんっとに柔らかいな……体操の成果か?」
「うる、さい!」

 折りたたまれるように、というよりは圧し掛かってきた永倉を抱き込むような形で、だけれど触れられたり口付けられたりする皮膚の感覚から逃げるように丸まるその姿は永倉の欲を煽るだけだった。

「ていうか余計密着してんぞ……ああ、そっちが狙いか?」
「ねらって、ない! やっ、めっ、あっ、やらっ!」

 いつの間にか脱がされたシャツと、それから軽く触れられたスラックスからいつも通りに何故かはみ出して生えている尻尾に手を回せばあっさりと力を失った斎藤の体と上気した顔を見ながら永倉はふと考えた。

「……柔軟なぁ」
「? な、に?」

 少し怯えたように言った斎藤は、その行為自体というより永倉の声に怯えたようで、だとすると流れるように、というか流れで情事に持ち込まれていることには疑問を持たないのだろうか、と彼は思うのだが、それを言ってしまうとまた抵抗される、と考えて、いや別に抵抗されても、と最低なことを考えてからかといってロクに抵抗も出来ないだろうとベルトに手を掛けた。

「んっ!? まて、ちょっと、あっ!」
「なんでだよ? ヤるのに邪魔、当たり前だろ」

 きっぱりと言って素知らぬ顔でスラックスも下着も脱がせてしまってから、丸まったまま足を閉じようとした斎藤に永倉は軽く笑ってそこを見て言った。

「いやだいやだ鳴いてる割にはずいぶん感じてんじゃねぇか。特になんもしてねぇのに、これも柔軟の成果かなんかか?」
「ちがう、やめて、んみっ! あっ、んぁ……」

 そう言ってから小さく喘いだ斎藤の性器は既に硬さを持っていて、軽く触れた永倉の手にどんどん抜けていく力にまた彼の口からは小さな笑いが落ちた。

「どうした?」
「んっ、あっ、ちがっ!」

 必死に抵抗、というよりは何か否定しようとする斎藤を焦らすように白い太ももや足を撫でれば、震える身体のついでにぴくぴくと動くのは耳なのだから面白いし、ごまかしが利かないのは素直だな、と思いながら永倉は追い詰めるようにもう一度聞いてみた。

「どうした? なんもしてねぇだろ?」
「このごろっ……んっ、ちがっ」
「何が?」
「やめ、やら、さいきんっ、んぁっ……!」
「……は?」

 最近、と言われて永倉は思わず触れる手を一旦止めて、覆い被さるようになっていた、丸めるように、折りたたむようにしていた斎藤をベッドに置き直して震えるその頬と耳を撫でてみれば、紅潮した顔、それに涙が溜まった目で彼は言う。

「あんま、しんぱち」
「俺?」
「寂しいって言ってたのに、でも、急にこういうこと、されたら、楽しくて……僕だけ?」
「……ハァァァ……」
「ミッ!?」

『ウサギが寂しいと死ぬというのは作り話です。過度なストレスを与えないようにしましょう』

 確かにそう書いてあった。半獣化バグに沿う内容かは分からないが、ウサギは寂しくても死なないらしい、と永倉は知っていたし、それにコヤンスカヤ二人から誘拐されたことを考えても確かに一人歩きは悪いのかもしれないが、それでも余計に、あの二人の洗脳から見ると「信用していない」とか「外に出すには恥ずかしい」とかそういう方面の不安を抱かせるのでは? ということから放し飼い……は言い過ぎだが、目の届く範囲でというのも過保護かもしれないと思いつつも、散歩や一人歩きなどを積極的にさせていたのが、結局は! と永倉は大きく溜息をついていた。

「おまえはいつもこっちの考えの斜め上というか、そういうところにいくな……」
「え?」
「そういうところが可愛いんだが……」
「んみ?」
「俺があんまり構わないから、ていうかおまえが寝るからだろ、散歩だなんだで疲れたって」
「え?」
「こっちは毎晩でも……ウサギだから体力落ちてんのは知ってたけど」

 きょとんとした顔の斎藤を撫でて、それから内側が桃色に染まった耳を撫でつつ目許にたまった涙を掬ってやれば、ぴくぴくと震えた彼に続けた。

「寂しいんだよ、寂しいからなんとかしておまえが逃げねぇように……っていうのが間違いだったんだな」
「あの……だから、ひさしぶり、ではないけ、ど……こんな急にされたら、なんか、あの……」

 まあ久しぶりではないな、毎日ではなくとも二日に一回は、とかやはり最低なことを考えながらふと永倉は「柔軟」とか「役に立つ」とか言い出した斎藤のことを考える。誘拐されかけて、必死に巣を作って震えていた彼に『寂しい』と言って繋ぎ止めるにも、信用してもらうにも、と思ってもどう頑張ってもと思ってから回っていたのはそれでもこちらの方だったか、と。

「素直に可愛いって言って囲っておけばいいだけの話か」
「んっ!?」
「ヤりたい時は遠慮なく言え。可愛がってやる」
「ちが、らけど、しんぱちに、付き合ってやる、から!」

 もう呂律の回っていない声に、「ああそういや寂しくて死ぬことはなくても万年発情期はそうらしいですね」と飼育本の著者に脳内で声を掛けつつ永倉は軽く笑ってその『柔らかい』体躯を折りたたむようにした。

「みうっ!?」
「じゃあ付き合ってくれや。柔軟してたんだろ? 成果でも見せてもらうか」
「!? 何言って……!?」
「持ってろ。離すなよ。あとそのままこっち見てろ。目ェ閉じたら噛むぞ」

 そう言ってそのまま身体が柔らかいのをいいことに折りたたむようにしたままの足を斎藤自身に持たせてみる。言われていることとやらされていることの意味は分かるが、というか分かるからやめさせようとするが、そもそも体勢的に、と思って持たされた足を閉じようとしてもそれが出来ない。出来ないというか。

「やめ、ろ、やめ、て、ほんと、まって!」
「構ってほしかったんだろ? 可愛がってほしかったんだろ? いくらでもやってやるから言えよな」
「ちがう、そうじゃ、なく、てっ……!」
「なに?」
「しゃ、べんな! んぁっ、やめ、っ……!」

 べろりと性器を舐められたうえに軽くくわえられて、言葉もないままにその感触と快楽に目を閉じようとしたが、直前に『目を閉じるな』と言われたことと、それから自分で自分の足を開いて固定している、という倒錯的な状態に、斎藤は思わず目を逸らせずにその白の髪が視界に入ってしまい、それから見えた赤い舌に必死に声を堪えようとすれば、今度は視界に弾けたように光が見えた。

「やばい、だめ、それやめて! んぁっ、やっめっ、ちがっ!」
「は? 気持ち良さそうじゃねぇか」
「だっから、しゃべんな! ひっ、うっ、やめっ、うぁっあ、あ、」
「ああ、集中しろ、とかか?」
「ちが、やめっ!? っ! ぁ……やめ、はなせ、はなし、て、んぁ、やだ、やら、やめて、しんぱち、やら、やめっ!」

 舌と唇の感触、それにたまに触れる口内の感触や息遣いと、それをやっているのが間違いなく目の前の男なのだとどうしても目を閉じたり逸らしたりせずに見てしまう自分自身に怯えるように、そうだというのに甘い声を上げている斎藤に、さすがにこれは、と思って永倉は顔を上げて浅く息をつく彼と目を合わせて、それでも見せつけるように口の端を舐めた。

「本気で口淫したらおまえ死にそうだな?」
「やめ、まって、ぼく、やるから……! んっ、やらっんぁっ……」
「おまえ何言ってるか分かってねぇだろ、もはや……」
「だめ、しんぱちにされたら、きもちよくて、も、だめだから、やめて」

 足を支えていた手ももう落ちているし、力も抜けた身体で必死にそう言ってくる斎藤のそこに軽く触れればまたびくびくと震える身体と耳、それから隠れていた丸い尻尾に気を良くしたように永倉はまた折りたたむと言うよりも折り重なるようにして彼を押し倒した。

「まって、ちゃんと、その……」
「なにを、ちゃんと?」
「っー……! わかってる、くせに! ちゃんと、して!」
「遊びすぎて悪かったって。ちゃんとやってやるから」
「んー」

 そう撫でながら言ってやればすぐにそういう感覚というか状態というか、ぽやぽやした顔で先程までとはまた違った意味で力が抜けて身体を任せてくるのはやはり万年何とか、と思ってから永倉は呟いた。

「案外信用されて……いるのか?」
「ん? しないの?」
「……野生的というか、野生味が増しているというか……」

 ウサギ化してからずっとだが、と呟きながら永倉は自分の理性を信じるようにローションのボトルに手を伸ばしてそれから、反応が可愛いから、とか素直だから、と適当な理由を付けてこちらから口淫までした時点で、と思い直す。

「理性も何もねぇな、ここまでくると」

 野生だか理性だか知らねぇけど、と小さく言えば、青いウサギに半分なっている斎藤が首を傾げた。耳が一緒に傾いて揺れる。

「なに?」
「……あざとい」
「?」





「んぅっ……ふぁっ、んっ……」
「ウサギって軟体生物なのか……これは美味そうな兎鍋になれそうだな」
「毎日、食べる?」
「なにいってんだこいつ……」

 そう言いながら後孔を拡げていた指を抜いて、煽り文句なのか、と考え直した永倉は、組み敷いたままなのに柔らかい感触がするし、そういう柔軟な動きを頓にしているように見えるのは気のせいだろうか、と思いながらそのままそこに自身を宛がった。

「挿れてもいいか?」
「ん……はや、くして?」
「煽んな」
「っ……んぁっ、あつ……ぁ……ん」
「っ、どした? 痛いか? ていうかあぶねぇから、やめろ」

 半分ほど挿入したところで、普段と変わりがないというか、いつも通りだと思ったのに、ぴったりと抱き着くというよりくっついて来ようとした斎藤を押し留めれば、不満げな顔をされて、永倉はいい加減理性というか快楽に逆らうのも無理だと思いつつも、半端な状態だが斎藤を抱え上げるようにすれば、やはり密着されて、拡がっていたそこに勝手に呑まれてしまう。

「やめろ、馬鹿! つーか何のつもりだっ、おまえは!」
「からだ」
「は?」
「んぁっ……やわらかいから、はいる」
「……ばかなのこいつ……」
「ばかは、しんぱち……んぁっ!? あっ、まって、ちが、ばかとか、いって、ぁっ、まって、ぁっ!」
「おまえが、やったんだろうが! 勝手に密着して勝手に俺の自分で入れたんだろうが、そのくらいなら勝手に楽しませてもらうぞ」
「まって、ちが、やら、イっちゃ、も、おく、やめ!?」
「ああ、奥? おまえが乗っかってくっついてきて、こうやって柔らかいからじゃねぇの」
「あっ!? まって、まって、らめ、まて、んぁ……」

 柔らかい、と自称しているからとそのままその滑らかに動くらしい体躯をいつもよりも激しく犯して、奥に当たったのが怖いのか必死に抵抗しようとする斎藤に構わず腰をぶつければ、ゴツとぶつかったその感覚と快楽に耐え切れずに吐精してしまい、喉が反ってそのまま涙がこぼれた彼に永倉は笑った。

「気持ちいいだろ?」
「んぁっ! なっ、やめ、はげしっ、イったから、も、ひぅっ」
「悪いんだが俺はまだイってねぇ」
「んっあっ……! まって、まって! あっ、だめ、まって」
「待たない。柔らかくていいな、ほら」
「ひっ、あっ!? おく、だめ、まって!」

 柔らかい、と言われて戯れのように一度引き抜かれ、そのまま一気に叩きつけられれば、何度も欲を教え込まれた身体はそのまま快感を拾ってしまい、そのまま達したのかくたりと寄り掛かる様にくっついてきた斎藤に彼は思わず唇を噛んだ。

「締めんな……やめろというか、いい加減に、しろと言いたいところだが……」
「んっ、ごめ……ん?」
「別に謝らなくていいんだが、おまえ、ほんっと……もう無理、ナカでいいよな?」
「んぁっ!? あつい、あっ、や、んっ……」
「っ……出されてイってんだから、もう十分淫乱ウサギというか、うちの飼いウサギだろうが、どう考えても」
「らって、きもち……」
「あーあ……もう野生は無理だわ……」

 何とはなしにそう呟いたが、胎内に射精された感覚でぴくぴく小刻みに快楽を拾うウサギを見ながら、放し飼いにしようがどうしようが、そもそも自分のウサギだったな、と改めて考えて、そのまま軽く耳を撫でた。





「……柔軟ってそうじゃない」
「は? おまえも気持ち良かっただろ?」
「違う! そうじゃ、なくて! なんか違う! 考えてたのと違う!」
「そうか? 耳と尻尾付けたエロい恋人が部屋に帰ったら柔軟運動して待ってるとか、どう頑張ってもアダルトビデオの導入部分でしかないだろ?」
「ち が う!!」




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2024/9/30