強欲
風間は人からよく、欲が薄そうだと言われる。何事にも執着しないタイプだ、とか表現に幅はあるものの、概ねそれは欲が薄いという意味だと本人は思っていた。
もちろん、戦いにおける部分で欲が薄いなどということは一切なく、それは周りも承知の上だ。ただ、私生活であまりこだわったり、執着したり、欲を出したりしない、と。
「かーざまさん!」
そんなことを今日も言われて、そんなものかと思いながら本部の廊下を歩いていたら、ぴょんぴょん跳ねながら寄ってきたかつてのオペレーターである宇佐美栞に風間は立ち止って彼女を抱き留めた。
「うわっと!ちょっと距離測り損ねました!」
「かまわん」
ぽすっと小さいながらも膂力のある風間が抱き留めたすぐあとには、宇佐美は何ごともなかったように離れてしまう。それに風間はやり場のなくなった腕を一瞬さまよわせてすぐに下ろした。
「何か用か?」
「あ、見かけたからちょっと。忙しかったですか?」
そう言われて、特に用事がなくても平気で飛び込んでくる宇佐美に風間は皮肉な気持ちになる。
欲が薄いなんて、嘘だ。
「宇佐美、暇ならどこか寄っていくか?」
「あ、ボス待ってるだけなんです。そろそろ会議も終わっちゃうし、また今度にします」
「そうか」
彼女と一緒にいたいと、その欲を叶えられるような関係に、今の自分はないのだと思うとじりじりとした感覚がある。
これを強欲と呼ばずに何と呼ぼうか。
「じゃ、また!」
「ああ。気を付けてな」
定型句の挨拶を交わしながら、ああ彼女を独占したいと願う。
欲が薄いなんて、嘘だ。