嫉妬


「景時さん、どうしたんですか」
「どうもしないけどさ」

 京の梶原邸、上げられた御簾から日差しの差し込む部屋で望美を後ろから羽交い絞めにしている夫こと景時に、望美はされるがままになりながら、どうしてこうなったのか考えていた。考えていたが答えは出ない。だって、普段通りこの部屋で縫物の練習をしていたら、突然やってきた夫に針と道具箱を片付けられ、そうして後ろから抱きしめられて今に至るのだから。

「どうもしないわけないでしょう」

 そこまで深刻な内容でもなさそうだが、肩口に顔をうずめる景時に、望美はそう声を掛けた。

「オレ、思うんだけどさ」

 そうしたらその肩口からくぐもった声で返される。

「譲くんみたいに君の好物を作れるわけでもなければそもそも知らないし」
「へ?」
「ましてや将臣くんみたいに君の小さい頃のことなんて知らないし!!」
「はい?」

 この世界で共に過ごすようになって一年以上が経つというのに、突然に出てきたそれは……

「嫉妬、してくれたったことですか?」
「……そうなんだよね。あー、オレずっと年上なのにみっともない!でも悔しい!」

 ぐりぐりと望美に甘えるように肩口に額を押し付ける景時のやわらかい髪に望美は体をひねって何とか触れるとわしゃわしゃと整えられたそれを崩してしまう。

「私の旦那様は景時さんだけなんだから、嫉妬なんてしないでよ」
「それでも妬ましいものは妬ましいんだよ」

 そう言って、景時は望美の手をのけて、今度こそ正面を向かせて彼女を抱きすくめる。

「ね、だから嫉妬して弱気な旦那様を安心させて、な〜んて?」

 抱きすくめられたその腕の感覚の次に、望美が感じたのは背中が畳に触れる感触。

「まだお昼っ…」

 反論は、やわらかな口づけでふさがれた。