畜生
惹かれ合ったのはほとんど獣の本能だと、柔造は思っている。自分が蝮を愛してしまったことも、蝮が自分を愛してしまったことも、生まれた時からの宿命で、本能なのだと今も昔も思っている。
そこに父たちがいて、兄がいて、その庇護の許で惹かれ合い、愛し合ったのは自明なのだと彼は思っていた。
「世界が悪いねんで」
彼は小さく呟いた。その自明の理を引き裂いたのは、しかしながら、その宿命や本能と同じ血だった。その血統が、その立場が、二人の本能を妨げ、苛み、隠した。
だから、だから。
「ぜーんぜん、心配しとらんかったって言うたら蝮笑うかな」
彼女の裏切りを知ったって、彼女は自分のところに帰ってくるしかないのだという絶対の自信が彼にはあった。
だってそれが本能だから。
「俺たちは愛し合うように出来ている」
そこに理性など、思考など、理屈など、いらない。
明陀という箱庭は、二人にはあまりに狭いはずなのに、その世界の中で獣のように本能のままに愛し合い、貪り合う。
それが自らの道だと、二人は知っていた。