「えっと?土方さんに言われたので」
「うーんとね、なんだろう、これ。俺もよく分からんし副長に言われたら何でもやるけどさ」
「まあ、粛清だのなんだのはうちと三番隊の仕事ですし」

 淡々と言われて、先ほど斬った「仲間」だったやつに沖田が言われた「化物!」という叫び声についてちょっと考えていたんだけれど、少しは気にしてんのかなー、なんて思った俺が馬鹿だったのかね。

「沖田ってさ、強いよね」
「はあ?強くないとか価値ありますか?」

 平然と、そして不思議そうに返されて、こちらも返答に詰まる。価値、価値か。難しくはないがこう、何というか。

「斎藤さんも強いでしょうに」

 そう女は笑った。





「強くないと、価値なんてない。剣を握れないなら、価値なんてない」
「沖田、そんな体で何やってる」

 血を吐いて刀を握って、布団から抜け出そうとした沖田の肩を掴んで布団に戻す。この離れに近づくのも局長と副長、山崎に俺くらいだろう。

「私は、近藤さんと土方さんの剣で」

 だから、と言った彼女の首元を軽く叩く。ことり、と倒れた体を受け止めて、改めて布団に戻して思う。

「ここまで来ても、か」

 俺たちは、そうしかあれないのかもしれない、と。





「三番隊隊長、斎藤一、ねぇ」

 カルデアでくるりと刀を回して一言言う。俺の全盛期は三番隊隊長なのに、スーツも着るしコートも着るし。時尾ちゃんとの思い出もあるし。
 でも、さ。俺の記憶の、俺の記録の一番の根幹は「三番隊」の「隊長」だった頃で、永倉さんに「無敵の剣」と呼ばれた頃だと思ったら、どうにも妙な気分になった。
 そうしてマスターちゃんに沖田を変えたのはお前か、なんて突っ掛かったけどさ、まあ分かってはいるんだよ。

「あ、さいとーさん!仕合!」
「はいはい、今度ね」

 廊下でぼんやり思っていたらじゃれついてきた沖田ちゃんにこのあしらい方も何度目かな、なんて思いながらぽんと軽く頭を撫でる。そうしたら、沖田ちゃんは不満そうに口を尖らせた。

「そればっかりですね、いっつも」
「だってねぇ……」

 おまえとやったら負けるしさ、なんて思いながら、その顔を見る。綺麗な顔。桜色の着物。大きな髪飾り。

「なんでだろうな」
「はい?」

 俺が変えたかったなんて傲慢なことは思わない。
 俺だって、他の誰かに変えられた。変えてもらった。それまで、おまえのことを理解することも出来なかった。

「シーザーを理解するのに、シーザーである必要はない」
「?」
「西洋のサーヴァントさんに聞いただけ。世界は英雄たちの基準でできてるワケじゃないっていう話」

 俺の言葉に沖田ちゃんはきょとんとした。

「ここは英雄の集まりですが」

 それに俺は力なく笑った。少なくとも、俺は俺を英雄だなんて思ってないからさ、と。

「まあだけど」

 そう思いながら、静かに続ける。

「おまえを理解するのにおまえである必要はないけど、おまえのことは、理解したつもりだよ」

 今はね、と小さく続けたら、沖田ちゃんは笑った。

「馬鹿ですね」

 そう、力なく、笑った。
 ―――愛しているとか、いないとか。