手をつなごう
君と、手をつなごう
桃城くんと!
森くんと!
西の忍足くんと!
桃城くんと!
「あー、その」
差し出されたそれに、彼女はきょとんと首を傾げる。
「なあに?…えっ、ちょっと!」
ぐいっと手を引かれて、華奢な身体が傾いた。だけれど、その不安定な体勢を、彼は軽々と支えてみせる。肩に掛けたテニスバッグが少しだけ傾いた。
「ちょっとそこまで、な?」
彼が引く手は、帰り道とは反対側。
悪戯っ子のようなその視線に、彼女はふと微笑んだ。
君と、手をつなごう
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ストテニの帰りにちょっと寄り道
森くんと!
「杏ちゃんってさあ」
「へあっ!?森くん!?」
「けっこう周りが見えなくなるタイプだよね」
苦笑して引かれた腕にかかる力は、思うよりずっと強い。
「あれ?」
「迷ったんだと思うよ。こっち」
やはり笑顔で彼は言った。彼の手には紙袋、背景は、時代掛かった通り。ひんやりした小路の中で、彼の手の温度がひどくあたたかかった。
君と、手をつなごう
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古書店の店先で、迷い猫を拾いました
西の忍足くんと!
「あれ?杏ちゃん、大丈夫か?」
「速い…です…よ!」
「うっ、悪い。大阪人って結構早足なんよ」
息の上がった彼女を見て、忍足は眉を下げて言った。それに杏はちょっとだけ笑ってしまう。
「大阪の人が、早足なんじゃなくて、謙也さんが早すぎるの」
その一言に、彼は少しだけ目を見開いて、それからニカッと笑う。
「せやったら、ゆっくりの杏ちゃんと一緒に歩けばええな」
手を引くなら、速度はきっと一緒になるから―
君と、手をつなごう
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大阪観光。添乗員は浪速のスピードスターです
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杏ちゃん誕生日おめでとう!という訳で第二弾。相変わらずの短さでした。
2012/6/28