「チッ、今いいところだったのに」
「桜乃ちゃん!鳳くんもありがとう」
「どういたしまして」
そこに来たのは桜乃と鳳だった。よくよく考えればこの駅の周りに映画館なんて一館しかない。
「ロビーで竜崎さんに会ってさ、そういえば映画館じゃなくてこっちで待ち合わせだったって気付いて」
「私も、鳳さんと話してて気付いて」
天然全開の二人に、残りの四人は大きなため息をついた。
「でもそろそろ時間なのは間違いないよね。待たせてごめんね、桜乃ちゃん」
「私こそすみません、集合場所間違えちゃって」
「いいっていいって」
「そうだよ、日吉があんまり言うからこんな平和的じゃない映画に行くんだから少しくらい大目に見てよね」
杏の言葉に上積みするように言った鳳の鳩尾辺りに掌底を叩き込んでやろうかと日吉は思ったがグッと堪えて奇妙にそろった六人組を思った。
六月。梅雨のさなかだというのに、今日はすっきりと晴れている。そして時間は刻一刻と、開場へと向かっている。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか」
朋香の一言で六人が歩き出す。…正確には一人だけ別の方向に、だが。
「橘さん、そっち逆」
一人逆方向に行こうとした杏を、鳳の手が捕まえる。
「あ、ごめん。ありがとう」
「ここけっこう迷いやすいから」
笑って言って、それから鳳はこっそり続ける。
「あとで映画の感想教えてね。こっちのはずいぶん物騒みたいだから」
まかせて、と杏もこっそり言って、二人は手を離した。
映画の上映時間まであと―――
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半年近く遅れましたが杏ちゃんおたおめ!今年は氷帝3人と3人娘が同じ映画館に行く話でした。
手をつないでいるというより掴んでいたり迷子防止だったりしますが、今年もおめでとう!
そしてファンブックで3月確定しても6月になっててごめん!