「傘がラッキーアイテムとはよく言ったものだな」
「すごいドンピシャですよ!」

 テンションが上がっている宇佐美を落ち着けるように入った喫茶店で紅茶を飲んで応じてから、彼女は先ほどの店でもらった冊子を濡れないようにいそいそとビニール袋で覆っている。

「大丈夫か」
「はい!なんかさっき焦っちゃって。お店でやればよかったな」
「ここも雨は当たらないから大丈夫だ」
「こなみに相談しないとなあ。千佳ちゃんは早い気がするし…ハッ、歌歩ちゃん!?歌歩ちゃんも呼んで相談しようか!?」
「昔から思っていたがお前というかお前たちの三上に対するその絶大な信頼はどこからきているんだ」

 問うた風間にしても、多分説明されても分からないのだろうなということは分かっていた。それでもずいぶん長い付き合いにもなると不思議にもなるものである。

「というかだ」
「はい?」
「俺が不在の時に決めるなよ」
「えー、サプライズもありかなって」
「今言ったからもうサプライズにならないな。つまりそれは無しだ」

 涼しげな顔で言ってコーヒーを飲んだ風間に、また嵌められた、と思いながらも宇佐美は嬉しげに笑った。

「初めて着るなあ」
「これから先、この一回以外絶対に着させないから満足のいくものを選べ」
「すごい束縛宣言来た!」
「当たり前だろう。お前が二度もウェディングドレスを着ることなど認可しない」
「はあい」

 笑って応えた彼女に、風間はふと首を傾げて思い出したことを訊いてみる。

「そういえば、朝のあれ、自分の運勢は見たのか」

 その問いに、宇佐美は困ったようにかくんと首を傾げる。二人して首を傾げた朝と同じような光景だった。

「よく考えたら覚えてないですね」
「まあ、そんなものだな」
「そんなものですねえ」




『今日の一位はねこ座のあなた!今日は素敵な一日。大切な人との時間を大事にしてね!』




2014/12/10