蝮の中にも確信はなかった。ただ、矛造和尚の弟が新参で入ってきたのだ、というのだけは聞かされていた。それもまた優秀な将来ある僧になりそうだとみな一様に言っていく。
 それが、幼馴染であるかどうか、だけれど蛇白殿から出ることのない蝮には分からなかった。幼馴染。自分がそう思っているだけで、相手は憶えてもいないかもしれないけれど。
 矛造の弟は何人かいるらしくて、それが自分の考える、自分と一番歳の近い幼馴染のように思って育った相手であるかどうか、蝮にはまだ分からなかった。


『まあ俺は、兄よりずっと不出来ですが、どうぞよろしゅう』


 障子を殴りつける所作の激しさも、短気なところも、何も変わっていなかったのに、彼は蝮を憶えていなかった。

「柔造なんになあ」

 蝮は寂しげに笑って、書類をそろえて、部屋の電気を消した。