父上、私は武に秀でることもなく、学を修めることもないままに、あなたの跡を継ぎました。
 そうして私は、あなたと違う主に仕えることを選びました。
 それ以外に母上と朔を守れそうもなかったから。
 あなただったらどうしただろうと思わないでもないのです。
 私が武に秀でることないために、学を修めさせようとしたあなたなら、あるいはこの選択を許さなかったのではないか、と。
 だけれど私にはほかに選べる道などなかった。
 笑ってください、自ら命を絶つ勇気さえなかったのです。

 そんな私が、初めて欲しいと、そばにいてほしい、それだけでは飽き足らず、そばで生きて笑っていてほしいと思ったのが、この子なんです。

 一生のうちで、初めてやり通したのが主に逆らうことだったなどというのは、とんだ笑い種かもしれませんが。
 だけれど私はすべてに抗ってでもこの子を守りたかった。この子との平穏を手に入れたかった。
 だから、もし、聞いているのなら。

「お許しいただけませんか」

 彼女と生きることを。