はきそう
「DIO様を見ていると吐きそうです」
「は……?」
花京院が不意に言って笑ったその横顔は、不穏というよりはどこか楽しそうだった、愉しそうだったそれが相も変わらず『人間味に満ちている』とDIO様自身が面白そうに言っていたことを思い返させる。
だからどうせ使い捨てだ、と言われているのを、彼自身が知っているかなぞ興味もないが。
「安心と喜びで満たされ過ぎて、狂い悶えてそのまま許容範囲を超えて吐きそうです」
「人間には高負荷か?」
見当違いなことを言っているな、と自覚はあったそれに、やはり青年は笑った。
「あなたには関係のない話だ」
*
「DIOのこと考えると吐きそうです」
「まあ、そりゃあ花京院はそうだろうよ」
「いや、DIOがどうというより……承太郎とかポルナレフたちのことを考えると、どうせ孤独だー、とか友達いないー、とか喚いていたのは僕自身の問題だと突きつけられて、DIOに安心して屈した自分を思い出して吐きそうで」
「……お前、あのなあ」
言葉は続かなかった。花京院の横顔を見ていてふと思い出すことがあったからだった。
わし、知ってんだよなあ……こういう無駄に精神が真っ当すぎて、人間らしすぎるヤツって無理するか早死にするって。溜息しか出んわ。
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