覚悟
見えないのが『当たり前』だった。
だから誰にも心を開かなかった。心が開けなかった。
「法皇の緑」に、相棒に心を開いたって、そこにいる彼は僕自身でしかないのだから、どんどんどんどんどんどん孤独になった。
そうすればそうするほど、それは自分のせいだと思った。そうしたら今度は、
彼)からも見捨てられるのではないかと思ってしまうほどに。
両親が嫌いなわけでも、周りが怖いわけでもないのだと分かっていた。
僕は僕自身が一番嫌いだった。だから、DIOに屈したのだと分かる。
僕は僕が嫌いだから、僕を肯定されれば誰でも良かった。僕が僕を肯定できなかったのだから。
「馬鹿みたいだ……みたい、じゃないな。馬鹿だ」
はっきり口に出してみたらスッキリした。
そうだ。だから。
「以前のように法皇の緑を誰にも見えないようにしてやる!」
口にしたのは覚悟だった。僕は僕自身のそれが、僕自身のこの能力が、僕自身が誰にも見えなくてもいい。その世界で生きてみせる。
DIOになど恐怖を感じない。
僕が真に恐怖を感じていたのはその世界に居場所がないことだ。
それは僕が作らなかったからだ、僕自身が逃げたからだ。
「もう逃げない」
例えばこの旅の仲間たちは、僕にこのスタンドがあってもなくても変わりがなかったと今ならはっきり言える。そこにあるのは一人の仲間としての存在でしかない。
「僕には『法皇の緑』がいる。それがなんだ」
いるんだ。いるそれを否定してなんになる。いる人がいる、いない人がいる。
そんなのは、男がいて女がいるのと変わらない。大人がいて子供がいるのと変わらない。
「その程度のことに気が付かせてくれた、その程度のこと、その程度の日常に生きることさえ怯え続けた僕は弱かった。だから!」
だから、僕はもうDIOに恐怖しない。いや、僕はDIOに恐怖していたのではない。
僕が恐怖していたのは世界に、日常に、一人きりだったそこに生きることだった。
もしも僕が恐怖を乗り越えたというのなら、それはただ普通に生きるなどという、当たり前の生からさえ目を逸らした自分自身の弱さを乗り越えただけのこと。
「来い。この結界を破ってみろ」
この覚悟は、お前如きへの恐怖では揺るがない。
「いや」
僕はお前になど恐怖していない。
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