閑話休題2

「拾った」
「……社長ってかディオ様ー、犬猫ならまだしも人拾ったなら交番に届けるのが常識です、とはいえあなたに常識求めるのが間違いでしたかね」

 テレンスに小言を言われたが関係ない、というか、今もフェロモンを振り撒いている『花京院』を抱えているのに理性を保っている私はむしろ称賛されて然るべきだ。

「……顔色が悪いですね。私はベータなので分かりかねますが、発情期か抑制剤の過剰摂取でも?」
「察しがいいな。両方だ」

「なら尚更病院に届けるのが常識ってもんですよ」

 何だかんだ言いつつも、邸の中の部屋を整えるテレンスに感心しつつ言う。

「それは出来んな。こいつは私のものだ」
「え……」

 ドン引き気味で手が止まったテレンスだが、構わず、というかさすがに甘い香りに我慢が利かなくなって頬や唇に口付けてしまう。やはり昔と変わらずに愛らしいな。

「うわぁ……あー、ハイ、そういう。行きずりのオメガ食おうとかいう悪癖でなくて、前から仰っていた『花京院典明』ですか、その青年」
「久々に会ったのにこの体たらく……許さんぞ花京院……というか、私がいないとやはり貴様は駄目だな花京院」

 テレンスの声も視線ももう入ってこない。愛おしくて今すぐ番にしたいが約束もあるし、何よりまずは体のことがあるし、説教もあるし……なんか腹立ってきたな。