おえかき

「……」
『今日はおえかき!』

 ……あんま、言いたくはないんだけども……

「ナガクラおねえさんって、なんていうの、独特な絵画センス? とか言えばいいの?」

 画面の中で出来上がっていくホワイトボードの上のキメラ……いや、キメラは合成獣だったと思うから、合成は、たぶんされてない、単一の生物だとは、思う……

「犬……? 牛……?」
『なんだか分かるか?』
「いや、分かんねぇわ、笑顔だな、コイツ……」

 すごい生き物、以外、分かんねぇよ……





「新八、なんか描いて」
「? 何だよ、急に。でもいいぜ! 俺お絵かき好きだし、ちょっと得意なんだ!」

 得意? じゃあアレは子供向けのサービス……? と同居していて、仲直りもして、やっと自分の気持ちを言えたから、昔の歌のお姉さん時代のことも隠さずに出してくれるようになった新八が、さらさらっと液晶タブレットのメモ機能に付属のペンでお絵かきを始めてくれた。  夕方、飯も食い終わって、タブレットで映画観るって言ってたから、一緒に見たいからテレビかパソコンがいい、と言って、ついでだからタブレット閉じる前に何となく頼んだだけなんだが……

「……これ、は?」
「上手いだろ! なんだか分かるか?」

 いや、待て、番組で描いてたのと変わんないけども、う、ん? いや、ケチャップとかで描いてもらう時はちょっと崩れてても分かるけども、うん? これは、でも、これはあのキメラの正体を知るチャンス……? ていうか上手い……え? 僕がおかしいのか?

「犬……? 牛……?」
「ネコ! 可愛いだろ!」

 ニコッと笑って言われて、僕は崩れ落ちていた。馬鹿って、下手くそって言ってやるつもりだったのに。

「うん、可愛い、すげぇ可愛い」
「な!」

 このもうどうしようもなく可愛いおねえさんを独り占めしてるんだ、僕……


おまけ・肉じゃがの日