手をつなごう
君と、手をつなごう
休日だというのに、ほとんど満員の電車から、さらには人でごった返したホーム、そうして改札をやり過ごして、杏は駅前の少し開けた、待ち合わせ場所によく使われる植木に囲まれたスペースにたどり着いた。
「あれ、樺地くん?」
そこにたどり着いたら、よく見知った顔があった。それだけではない。背が高いから、目立つのだ。杏の呼びかけに、驚いたように目を見開いたあと、樺地は一つ肯いた。
「跡部さんは?」
「今日は…違います」
「珍しいねってほどでもないのかな?待ち合わせ?」
「はい…自分は、目立つので…」
なるほど、と杏が納得した時だ。満員電車から降りてくる客の波がその広場に打ち寄せた。
「うわっ」
「あぶない、です」
くっと杏の手を引いて、樺地は半歩下がる。彼の半歩は常人の二歩か三歩分になるだろう。二人は何とかその波をしのいだ。
「樺地…と橘妹?」
「杏さん!…と樺地さん?」
その波の中から驚いたような声が二つ。
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