ホロスコープと運命論
オイこれ、テープ使い回してるんじゃないのか、というのがそのテレビ番組を見ていて風間が最初に思ったことだった。朝の情報番組に対する感想としてあるまじき感想である。
「きゃー!風間さん今日超ラッキーだね!」
並んで座るソファでクッションを押し潰すように抱き抱えながらその画面を指差した女性の顔を、風間はまじまじと見つめる。
「どこがだ」
「え?」
決して、彼女が皮肉やからかいでそのようなことを言う人間ではないのを知っているから、風間はごくごく真剣に聞いた。朝の情報番組はその風間が本気で使い回しだと思った星座占いコーナーを過ぎ去って、朝のキッチンなんちゃらというお気楽すぎる料理コーナーに移行していた。
ちなみに、風間が朝から自室のテレビを点けていた理由の8割以上が天気予報を見るためだったため、占いから料理へとコーナーが移行する時点でチャンネルを変えるか消すかした方が建設的だろう。だが彼は、まじまじとその女性を、宇佐美栞の顔を見つめていた。
『みかづき座のあなたは最下位!残念、今日は驚くほど運気が悪い!今日は傘を持って出かけるとラッキー!』
ラッキーも何も、外は酷い雨で、そもそもにして傘を持たずに出かけるという選択肢がない。
全く同じ文言を5年前の朝に同じ音声で聞いた記憶があるぞ、と思いながら、彼はその時はいなかった彼女を見つめていた。
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